設計事務所が考える、実家に隣接する空き家(工場跡)との付き合い方01
築70年以上稼業で使っていた工場建屋(空き家)と隣接する住宅の将来の増改築または建替えを見据えた住まいの将来計画。3世代にわたって住み続けられた住まいと家族を支えた工場建屋を今後如何に取り扱うべきか、をこの家を巣立った子供たちが考える計画、つまりは実家・空き家の問題。今回は設計の話よりも少し手前の話として、進行中の現況把握過程で生じている課題について話したい。常々、設計は整理の作業だと考え、特に図面を描く前のこの時間を大切にしている。
空き家は地上2階建て、鉄骨造。延床面積合計は約500㎡。屋根および外壁ともに波板スレート板張。築70年超え。工場としての稼働は20年前に終えて現在は物置状態に。まず生じた課題は工場で使用していた変圧器の廃棄と古い蛍光灯に用いられているPCB含有製品の廃棄だった。PCBとは人体に有害な油状の化学物質で、ある時期に製造された変圧器や蛍光灯等の部品に含有されているとされており、またその処理については今後期限を超過すると処分できなくなる問題が迫っていた。誰に調査を頼めばよいか分からず環境省から近所の電気店にまでリサーチ。含有可能性のある製品についてはメーカーから事業者宛てに通知ハガキが送付されるものの、その処理は所有者の裁量に任せられている。廃業後20年以上経過した工場所有者にとっては、購入履歴や施工履歴調査はかなり骨が折れる。業者に依頼すれば費用も生じることから、まずは自力で機器製造番号を調査してメーカー問合せをして回答待ち。その後の対処法をまた調査、、、これでほぼ1年を要した。最終的には然るべき機関にて分析報告書をもって無事に処分するに至った。
空き家の問題は、管理不十分や放置によって第三者が被る損害やその危険性が声高に叫ばれる昨今ですが、空き家所有者にとっては随時刷新されていく制度との乖離により身動きがとれない状況に陥る現実に迫られている。所有者側に寄り添った制度とフォローアップ体制の必要性を強く感じた。